みんなの声VOICE
しんちゃんの歩み~生まれるまで~(14)
<生まれた日(4/4)>
もうすぐ”しんちゃん”が、お腹の外に出てくる。
お腹の外の世界で、しんちゃんが一瞬でも自分で呼吸をするのかしないのか。それが最も重くて大切な関心事でした。
「始めますね」
そう声をかけられてからものの数分で、
「お腹を押しますよ」と聞こえ、お腹がギュニョっと動き、お腹から何かが出されたことが分かりました。
(生まれた!)
「ウギャー、ウギャー、ウギャー」
なんと、しんちゃんの泣き声が、手術室に響きわたりました。
全く想像していなかった光景でした。
(泣いた、泣いた、すごいなー、出たかったんだ)
きっと、もう手術の準備も終わったし、今なら主治医もいるんだから、もう出てもいいでしょ、月曜日までなんて待てないよって陣痛を起こしたんだ。
良かったな。
良かったな。
泣いたよ、泣けた。
私が手術台の向こうで処置を受けてるしんちゃんのことを思っているうちに、主治医は引き続き、既に亡くなっているこうちゃんを、お腹から出してくれました。
こうちゃんは、ほとんどお腹を押すことなく、スルッと出てきました。
しんちゃんとは違い、こうちゃんはすぐに手術室からどこかに抱えられて行ったようでした。今会える姿ではないのだろうと察し、先生方の配慮に感謝しました。
そうこうしているうちに、しんちゃんの処置をしてくださっていた新生児科の医師がこちらにやってきました。
「おかあさん、聞こえてましたよね? 泣きましたね、おめでとうございます。元気ですよ。ただ、ちょっと今疲れちゃって呼吸が弱くなってきてるんで、呼吸器を着けて呼吸を助けてあげたいと思うんですが。事前にお話いただいていた通りで、着けてあげていいですか? ね? 泣きましたもんね?」
生きていてくれた、生きようとしてくれた。
本当にそのときにはそれ以上に望むことはなく、むしろ私は彼の生命力に圧倒されていました。
「はい、助けてあげてください。お願いします。」
そうお願いして、私は全身麻酔で一旦の短い眠りにつきました。