みんなの声VOICE
しんちゃんの歩み~生まれるまで~(4)
<引き返せない現実>
ところが、25週の定期検診。
「お母さん、これ(超音波検査の画面の様子)分かりますか?」
医師から画面の中の我が子達を観るように促された瞬間、いつもドクドク動いていた2つの心臓が、1つしか見当たらないことが分かりました。
「動いてない、ですか?」
「そうなんです。何度も確認してみたのですが、1人の心臓が止まってしまっているようです。」
最初に心に浮かんだ言葉は
(あー、やっちまった)
でした。
「もう一人もかなり弱っている状態です。このまま病棟に上がって入院してください」
家族に状況を説明して入院のための荷物を用意してもらうように電話をする以外、一旦帰宅することも許されず、そのままMFICUでの管理入院となりました。
一卵性双胎のリスクは聞いていたのに。
双胎に体重差が出てきていたのに。
気をつけるに越したことなかったのに。
もっと大事にしなきゃいけなかったのに。
待合室でお腹張ってたのに。
え?いつから?
引き返したい、やり直したい。
心拍って戻るのかな。
どうしたら生き返るのだろう。
いや、無理だな。
無理だとわからないとな。
引き返せないことをしちゃったと自覚しないと。
皆にどう説明するかな。
入院の間お兄ちゃんの生活どうしたら組めるかな。
夢ってことにならないかな。
ならないな。
一生背負っていくんだな。
楽しくて楽しみでたまらなかった毎日が一瞬で変わり、
受入れたくない現実から、どうしたら元の生活に引き返せるのだろうかと
一生懸命考えながら
それでも、お兄ちゃんとの生活がある以上、ひたすら悩んだり落ち込んだりし続けてはいられないと、どこか気を張ろうとする自分もいて。
親として現実をちゃんと見ないと、と揺らぐ気持ちを抑えられたのは、
ただひたすら、
「この子の命をなかったことにしたくない」
という思いからでした。
お腹の中で亡くなった子どもは、戸籍に載りません。
亡くなってしまった子のためにも、お腹の中で弱っているというもう一人の子どもの命を守らなくてはいけない。そういう使命感を持ってしまっていたのだと思います。
今振り返ると、お腹の中で頑張っていた子どもに、親の身勝手で役割を担わせてしまっていました。申し訳ないことです。ただ、ベッド上から身動きできなくなったそのときの私には、お腹の中で生き続ける子どもの心音を聴き、胎動を感じることが、何よりの励みでした。