みんなの声VOICE
しんちゃんの歩み~生まれるまで~(9)
<大事な決断>
MFICUでのベッド上安静の日々も2か月を越え、このまま予定帝王切開の日を迎えられそうだと思えるようになった頃、改めて医師から子どもの状態や今後の説明をいただく場が設けられました。
子どもはお腹の中で活発に動き元気に過ごしていました。
しかし、脳の様子はというと、小さかった空洞は、頭が大きくなると更に広がっていました。
医師の説明によると、大脳がほとんど形成されていない。おそらくTTTSが起きた影響で、脳の成長に非常に大切な血管の血流が閉ざされてしまい、大脳が育たなかったのではないかと考えている、画像からの判断でしかないが、かなり重い障害があるだろう。寝たきりで、まず目は見えないと思われる。耳も聴こえない可能性がある。脳幹のあたりはしっかりあるが、だからといって生まれてきてから呼吸が出来るか誰にも分からない状態。
「そこでご両親に決めていただきたいことがあります。」
大切な話が始まりました。
生まれてきたときに、どれだけご本人のサポートをするか決めてほしい。生まれた瞬間に呼吸が出来ればよいけれど、出来ない可能性もある。そのときにどこまで呼吸を助けるか。できる限りのことを望まれるようであれば、新生児科は全力でご本人を助けられるように頑張ります。でも、人工呼吸器を一度つけると、それを外すことはできない。人工呼吸器のサポートが必要だと思われるときに、着けるか、着けないか。着けないまでも、どこまでのことを望まれるのか。それにより、手術のときから新生児科のチームが手術室で待機するかどうかの体制が大きく変わるので、帝王切開の前までには決めておいていただきたいのです。
それはそうだな、と思いました。
まだ時間的な猶予があったものの、私の意思はすでに決まっていました。
一度病室に戻ってから、夫婦で話をしました。
「子どもはお腹の中で2か月間もずっと元気に頑張ってくれていた。私は、生まれたときに、ほんの少しでも息をしようと頑張っている様子が見えたら、それは生きたいという意思だと思って、呼吸器でも何でも着けて出来るだけのことをしてあげたい。でももし、普通の子どもでもするくらいの処置をしても全く息をしないようなら、そのときはこれまで頑張ってくれたことを尊重して、感謝して、そこから呼吸器を着けるようなことはせず見送ってあげたいと思う。」
父親も、同じ考えだと言い、夫婦の気持ちはすぐに医師に伝えられました。